title  
line decor

FM浦和 森谷明仙 こころの日めくり

 

書へのオマージュ 森谷明仙ひとりごと
image
            2025年5月1日 書の風景 こころの風景(29)


                          (土)
                          (土)


            春から初夏へ

            新しい柔らかな
            うぶ毛に包まれていた木々たちは
            勢い芽吹いて
            街を一気に新緑の世界に誘っていく
            古い朽ちたと思っていた切り株や枝々からも
            新しい芽吹きが始まって
            その空気を突くような爽やかさに
            思わず手をそえたくなる
            「蘖(ひこばえ)」だ

            戦後
            「ひこばえ学級」と名付けられた
            学校教育がすすめらていたことを知ってから
            「根っこが有る限り芽は出て伸び 育っていく」蘖に
            より強く願い 希望を託すようになった
            冬を越え蓄えていた養分を
            一気に吸い上げて
            空に向かってぐんぐん伸びていく蘖たち
            それは
            精一杯に生きる力を放っているようで
            私のからだの芯の部分を潤し揺るがす
            そして思う 
            この日まで根っこを暖め
            養分を与え続けている「土」は
            なんと偉大なことだろう
            どんなに風雨を受けても
            「生きる」を支え続けている大地
            柔らかで暖かい土にそっと手を触れて
            「ありがとう」とつぶやいたら
            胸がつまってしまった

            遠い日
            ふるさとの遅い雪どけ後の土手に寝転んだ時     
            背中にじーんと伝わってきた「土」の暖かさを知った
            そして
            それはじわ―っと身体中にしみ込んでいった
            以来 「土」はわたしの憧れで希望になっている
            気がつけば あの時からもう20年以上も
            年を重ねてしまったが
            今も「土」との会話は 明日への約束だ

画像

                           森谷 明仙
                           (「SAITAMAねっとわーく」
                              2025年5月号より)


Copyright (c) 2008 Bokusya Meisen Moriya All right reserved.
※このホームページに掲載されている記事・写真・図画等の無断転載・複製を禁じます。